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イスラエルのバラク首相(当時)は、1999年の選挙戦の公約として、1年以内に南レバノンからのイスラエル軍の撤退をあげていた。そして撤退時期は当初2000年7月頃を想定していた。それが一ヶ月あまり早まり、5月24日、イスラエル軍は1978年のレバノン侵攻以来、22年にわたって駐留してきたレバノン南部からの撤退作業完了した。現在イスラエル軍が撤退した地域に生まれる軍事的な空白をどう埋めるかが、大きな問題となっている。とくにこの地でイスラエル軍を支援していた南レバノン軍(SLA)とその家族はゲリラ組織のヒズボラの報復から逃れるため多くがイスラエルに移住した模様である。そのようななか、国連レバノン暫定軍(UNIFIL)の展開へ期待が高まっており、国連は迅速な対応を求められている。しかしこの地域の問題の根本的解決には難題が残されている。以下現在までのいきさつとその背後の問題に触れてみた。

イスラエルのレバノン侵攻

第一次世界大戦後現在のレバノン領に当たる地域はフランスの委任統治領となった。その後1944年にフランスから独立したが、イスラエル建国に始まる中東の混乱にレバノンも巻き込まれていくことになった。1948年のイスラエルを建国後、多くのパレスチナ人がレバノン南部に難民となって流れ込んだ。レバノン南部はパレスチナ解放を旗印に活動するヒズボラなどのテロ集団の拠点となっていた。ここから、イスラム原理主義のテロリストたちが、イスラエル攻撃を仕掛けていた。北ガリラヤの住民たちは、長年にわたって、テロ攻撃の恐怖におびえながら生活をしてきた。70年代初頭より国境地域での緊張が高まっていたが、78年3月のパレスチナ人特殊部隊によるテロ攻撃を契機にイスラエルはパレスチナゲリラ掃討のために南レバノンへ侵攻、同地域を占領した。これがイスラエルのレバノン侵攻である。

その事態にレバノン政府は強く抗議し、これを受けて国連安保理は決議425を採択、イスラエルの南レバノンでの軍事行動の停止と当地からの軍の撤退を要請し、UNIFILの設置を決定し、78年3月に最初の部隊が南レバノンでの任務に就いた。しかし82年6月にイスラエルは南レバノンのゲリラ掃討を理由に再度南レバノンに侵攻し、85年に部分的に撤退したものの、以来南レバノンの国境隣接地帯を「安全保障地帯」と称し、現在に至るまで事実上占領していた。安全保障地帯は、北ガリラヤを防衛するだけでなく、イスラム原理主義のテロ活動を抑制するのに、大きな成果をあげた。しかし、イスラエルは、1982年以降、レバノンで900名の兵士を失っており、近年イスラエル国内でも同地域からのイスラエル軍の撤退を求める声が高まっていた。

争いの背後にあるレバノンの複雑な宗教構造

イスラエルは南レバノン占領後、背後で親イスラエル民兵組織を支援し、南レバノン軍を結成させた。イスラエルは南レバノン占領にレバノンの複雑な宗教的対立を利用した構図と見て取れる。レバノンは、人口約400万人、国土面積が日本の岐阜県ほどの小さな国であるが、国内には18の宗派が混在し、いわば宗教のモザイク国家を形成している。その結果、政治体制は、レバノンの各派間の融和を維持するため、代々大統領をキリスト教マロン派、国会議長をイスラム教シーア派、首相をイスラム教スンニー派から出すという、非常にユニークなシステムが採用されている。南レバノン軍はレバノン政府軍に所属していたマロン派の元兵士たちにより結成された。マロン派は東方教会系のキリスト教の一派であるが、一連の紛争前はレバノンで単一宗教として最大の信者を持っていたようである。その時の宗派基盤により、レバノン大統領は憲法によりマロン派から就任する事になっている。他の宗教共同体はこの権力構造に反対し、その信者数に比例しない権力をマロン派に与えていると主張している。特に近年シーア派が力を伸ばしている。対イスラエルの活発な活動を続けてきたのがイランをバックとしているイスラム教シーア派原理主義者組織「ヒズボラ」である。ヒズボラはイスラエルの占領に対する抵抗によって、レバノンの様々な地域共同体での支持を高め、その存在を認められている。ヒズボラはレバノン国会にも議席を持ち、貧困層以下の生活をしている約30%のレバノン人の大部分を占めるシーア派の市民の為に福祉のネットワークを作っている。ヒズボラはレバノンにイラン型のイスラム共和国の創設と全ての非イスラムの影響の排除を求めている。

イスラエル軍の撤退で放棄されたイスラエル軍と南レバノン軍の拠点には、次々とイスラム過激組織ヒズボラやその支持者らが流入している模様である。一方、イスラエルに避難した7000人あまりの南レバノン軍およびそれらの家族の大半はマロン派のキリスト教徒である。現在、イスラエルはすべてのSLA難民にイスラエルの市民権あるいは西欧諸国へ移住したい人々のためのビザの手配を提供している。さらに、イスラエル政府は必要物資も提供している。

中東地域の和平の行方は国連等による政治的な解決とともにともに唯一神を信じるユダヤ教、キリスト教、イスラム教の相互理解と一体化が必要であると思われる。歴史的に見ればこれらの3宗教は三兄弟である。一つの親を中心とした仲睦まじき三兄弟となってくれればと願うものである。

(引用した資料)

レバノンの主要な勢力

南レバノンをめぐる概況