タマル
世界のベストセラーの新訳聖書を手にしてみたことはあっても、最初の名前の羅列を見て読む気をなくし読まずに置いてあるという方が多いのではないでしょうか。それはアブラハムからイエスキリストに至る家系図です。その中に登場する人物はほとんどが男性ですが、4名程女性が登場しています。タマルはその中の一人です。タマルはヤコブの12人の子供の一人ユダの義理の娘です。旧約聖書の時代のイスラエル民族は性と血統を清く保つことを非常に重要視していたように考えられます。タマルのストーリーもそのことを示しています。タマルはユダの長男エルの嫁として迎えられましたが、エルはタマルとの間に子をもうける前に亡くなります。父ユダは長男の血統を残すために、次男のオナンにタマルとの間にエルの子として子をもうけるように命じます。しかしオナンはタマルとの間にもうける子が自分の子とならず、兄の子となるのが嫌でタマルと関係をもたず、精液を地にもらしました。余談ですが、自慰行為をあらわすオナニという言葉はこのオナンからきたという説があります。オナンのその行為は神の前に悪いことであったのでオナンは死んでしまいます。
子をもうけることができず二人の夫に先立たれたタマルはどうなるのでしょうか。ユダには三男シラがいましたが、ユダはシラをタマルに与えてシラまで死んでしまうことを憂慮しました。そこでユダはタマルにシラがもう少し大きくなれば与えると約束だけして実家に帰しました。ユダがシラを自分に与えるつもりがないことを知ったタマルがとった手段は非常に大胆なものでした。それは売春婦を装い義理の父であるユダと関係をもって子をもうけるというものでした。当事結婚以外の性関係を結んだ者は死刑に処されるという厳格なおきてがありました。そこでタマルはユダからユダの身分を示すしるしを受けとっておきました。後日タマルがみごもったのを風の便りに聞いたユダはタマルを淫行の罪で死刑に処するように命じました。買春を行った自分を棚にあげて死刑を命じるのは男性の身勝手さですが、最終的にユダはシラを与えると約束しながら与えなかった自分の非を認め、タマルが自分よりも正しいとしました。
以上のような話は我々からすると理解し難いものですが、神から選ばれた選民の血統を残すということには非常に大きな意味があり、当時の人々にとっては必死のことであったのでしょう。
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